牛尾の思い出 1

    ベィリーさんの事を書いてくれる方を募集中ですが、なかなか現れません ので、今回も牛尾が書く事にします。   「ベィリーさんは生まれたときからベィリーさんみたいに可愛いかった」 と野見山暁冶さんが、著書アトリエ日記に書いていますが、 本当に可愛い人だったんです。   おおきな目に、マッチ棒が二本は乗りそうな長いまつげ、 決して鼻は高くないのですが… 初めて会った時に「こちらがベィリーさんです」と紹介されましたので、 外国人だと思い込んでいました。   それに、その可愛らしい顔に似合わずきりりとした身のこなし、歯に絹着 せないストレートな発言は異国の人のように思えました。   いえ、半分はアメリカ人だったかもしれません。 それと言うのもジャック・ベィリーさんと結婚し、結局離婚する事にはな りましたが、亡くなるまでアメリカ国籍のままでしたから…   そんなモダンなベイリーさんが、お相撲が大好きと知った時は意外な感じ でした。 とにかく好きなんです。 毎晩相撲ダイジェストを欠かさず観ていました。 どの関取の事も詳しく、今生きていれば相撲審議会に参加できたかもしれ ません。   ひとつ相撲にまつわる思い出がありますのでご紹介します。   画廊が終わった後、画家の野見山暁冶さんのアトリエでそのお弟子さん達 との集まりがあり、少し遅れて行くとテレビで相撲ダイジェストが始まっ たそうです。 ベイリーさんがお相撲を好きなことを野見山さんがご存知だったのか、 全ての取り組みの勝敗を当てたら野見山作品油彩画の小品をプレゼント しようと言うことになったそうです。 そこの場所へ行くまでは画廊で仕事をしていましたので、もちろん、 大相撲中継を生で見られるはずはありません。 けれど、ベイリーさんは全ての取り組みを当ててしまったらしいのです。   プレゼントされた作品を見る度に、ベィリーさんは笑顔でその話をして くれました。 その作品はとてもいい作品でしたので、取り組みを全部当てた事よりも それをプレゼントされた事の方が嬉しかったのかもしれません。